2011年11月26日土曜日

『恋愛戯曲』その2

今週もちゃんと書きます。インプロゼミブログです。うつみです。

前回に続き、今回は鴻上尚史さんの『恋愛戯曲』のシーン2をやりました。シーン2は、登場人物は向井と寺田の二人だけ、数ページの短いシーンです。

新ゼミ長の仕切りにより2人組になり、大きく以下の3つのことをしました。


1. とりあえずやってみよう!

とりあえず2人組で20分ほど練習し、発表しあってみました。そしてさっさと振り返り。だいたいこんな感じでした。

うつみ「あと100倍くらいプランを詰めないといけない感じ。プランが詰まっていないので、舞台上でしんどくなる。」

どみんご「演劇学ゼミなら確かにそういうことを考える。が、ここはインプロゼミ。インプロゼミとして一番問題なのは、「演技がうそくさい!」ということ。」


2. インプロでやってみよう!

というわけで、どみんごプロデュースによりシーン2をインプロでやってみよう、ということになりました。ルールは次の通りです。

向井役:とにかく家に帰ろうとする
寺田役:とにかく向井を帰すまいとする(向井を谷山の部屋に行かせようとする)
※台本は気にしない。
※役を作らない(自分の性別・性格でやる)。

これも各グループ発表しあってみました。

とにかく必死で帰ろうとする向井と、向井を帰すまいとする寺田の駆け引きが面白く、インプロゼミ恒例の爆笑タイムになりました。

そして、演技はだいぶ自然になっていました。


3. インプロを踏まえてもう一度やってみよう!

「では、このインプロを踏まえてもう一度やってみましょう」というどみんごのかけ声で、再び2人組で20分ほど練習し、発表しあってみました。

結果としては、「まだぎこちないけど、最初よりはずっと自然」といった感じだったでしょうか。個人的には、振り回される側の向井の反応が特に自然になったなー、と思いました(逆に言うと、寺田はやっぱり不自然になりがち)。


振り返り

色々出ましたが、一番盛り上がったのは、「自分ならこうは言わない、というセリフをどうしたらいい?」というゆーこの質問からの話し合いでした。

僕はだいたい次のように答えました。「大きく2つある。1つ目は、本当に言わなくしちゃう。2つ目は、登場人物がどうしてこう言うのか、その枠組みを探る。もしくはそんなことは考えずに、機械的にここはこんな声の高さ、大きさ、スピードで、と考えてやっちゃう。」

それに対してのどみんごはこんな感じでした。「それ(機械的)は美輪明宏さんのやりかた。登場人物の枠組みを探るってのは近代的なやりかた。現代は役者を役にはめるのではなく、役者が本来持っているものを大切にする。佐藤信さんは、役者に台本を機械的に暗記させた後、インプロをやる。すると、インプロの中で台本と急接近する場面が出てくるので、そこをつかむ(ちなみに、この時役者は泣くらしい)」

更にここから発展して、心身一元論の話や禅の話にもなりました。

……インプロゼミが珍しくゼミっぽくなった瞬間でした。



おまけ:スポンタネイティー(spontaneity)

りょーこが「スポンタネイティーって何?」という爆弾発言をしていたので、補足。

スポンタネイティーとは、「自然発生」とも訳すことができる概念である。何かを意識的に生み出すのでなく、何かが意識することなく自然に生まれてくることである。人がスポンテイニアス(spontaneous)な状態になると、意識することなくアイディアが生まれてくるし、それを躊躇なく表現することができる。

高尾隆『インプロ教育:即興演劇は創造性を育てるか?』

(本当のおまけはここから)

ちなみに、僕はスポンタネイティー(自然発生)は建設的にも破壊的にも働くのではないかと考えています。

ある事に対して「出来る」と考えている人は出来る理由が自然発生してくるのに対して、「出来ない」と考えている人は出来ない理由が自然発してくる、といった具合です。

そして、人は「スポンテイニアスな状態になる」のではなく、「常にスポンテイニアス」なのではないかと考えています。ただし、そこで自然発生するものが建設的なものなのか破壊的なものなのかによって、創造的と言われたり言われなかったりする、ということです。

さらに、アイディアは「躊躇なく表現することができる」ものではなく、「その瞬間に表現してしまう」ものではないかと考えています。

今日のゆーこの「自分ならこうは言わない……」のところでも少し話しましたが、「自分ならこうは言わない」と考えて演技をすると、体は「自分ならこうは言わない」という考えを表現するように動き、見ている人には「自分ならこうは言わない、と思ってるなー」と伝わってしまう(実際にはここまで正確ではなく、「なんか変な感じ」で伝わる)、ということです。

よくある例だと、ある事を「苦手だ」と思いながらやっている人の行動って、すぐに「あ、この人これが苦手なんだな」と分かりますよね。

僕が最初に言っていた「プランを詰めないと」もこれにつながっており、建設的なプランを詰めておかないと破壊的なプランが入り込んで来ちゃうかもよ、ということです。ゆーこの質問に対する僕の答えも、破壊的なプラン(自分ならこうは言わない)はやめて、できるだけ建設的なプランを持とうぜ、ということです。

(本当のおまけはここまで)


今日のベストシーン
「電話は谷山の部屋にしかありません」by よーこー

向井を谷山の部屋に行かせるために、寺田役の陽光が即興で言った言葉。

うつみ